より柔軟な欲求モデル?|ERG理論をやさしく解説

心理学

こんにちは。あいうえです。

今日も、ちょっと役立つお話をお届けします。

今回は、前回ご紹介した「マズローの欲求5段階説」に続く、「ERG理論」のお話です。


はじめに

マズローの理論をベースに、より現実の人間行動に即して発展させた理論があるのをご存じでしょうか? それが今回のテーマ、ERG理論です。

この理論は、アメリカの心理学者クレイトン・アルダファーが提唱したもので、 「もう少し柔軟に人間の欲求を捉えられないか?」という問いから生まれました。

マズローでは、欲求は下から順番に満たされていく“階段式”でしたが、 ERG理論では「いくつもの欲求が同時に存在するかもしれない」と考えたり、 「上の欲求が満たされなければ下に戻ることもあるよね」といった、より現実的な視点を加えています。

しばあいうえ
しばあいうえ

つまり、おなじときに

なんこもよっきゅうがあるってこと?


ERG理論とは?

ERG理論は、マズローの欲求5段階説をもとに、よりシンプルで柔軟な形へと再構成された理論です。 ERGとは以下の3つの英単語の頭文字を取ったものです。

欲求の種類概要マズロー理論との対応
存在欲求(Existence Needs)生きるために必要な基本的な欲求(食事、安全、収入など)生理的欲求、安全欲求
関係欲求(Relatedness Needs)他者とのつながり、愛情、承認など社会的欲求、外的な承認欲求
成長欲求(Growth Needs)自己成長、能力の発揮、創造性内的な承認欲求、自己実現欲求

ERG理論の3つのポイント

1. 階層ではなく「同時並行」

ERG理論では、欲求は階段のように一方通行で進むのではなく、同時に複数の欲求が存在し得るとされます。

たとえば「安心して暮らしたい(存在欲求)」と思いながら、「誰かとつながりたい(関係欲求)」「自分を成長させたい(成長欲求)」といった気持ちを同時に抱えることがあります。

2. 退行(フラストレーション・リグレッション)

上位の欲求が満たされないと、下位の欲求が再び強くなることもあります。 たとえば、「仕事で成長したい」と思っていても、うまくいかないと「安定した収入が欲しい」「認められたい」といった欲求が強まってくることがあります。

しばあいうえ
しばあいうえ

ストレスでたべすぎちゃうとかも?

3. 満足と進級(サティスファクション・プログレッション)

一方で、ある欲求が満たされると、自然と次の欲求に進むという傾向もあります。 これはマズロー理論と共通する部分です。

たとえば生活が安定すると、人は自然と人間関係を大切にしたくなり、人間関係がうまくいくと“もっと成長したい”という気持ちが湧いてくる——これが“満足と進級”のしくみです。


「同時存在性」ってどういうこと?

ERG理論の特徴的な考え方のひとつが、「同時存在性」です。 これは、複数の欲求が同時に存在し、並行して満たされようとするという意味です。

具体例

「誰かと一緒に食事をする」  

→ 存在欲求(食事)+関係欲求(交流)+成長欲求(新しい知識の獲得)  

このように、一つの行動が複数の欲求を同時に満たしていることは、実生活でもよくあります。

ERG理論は、こうした人間の複雑な心理を自然に説明できるモデルとして注目されています。


マズロー理論との違いは?

比較項目マズローの理論ERG理論
欲求の数5段階3分類
欲求の進み方下から上へ段階的に進む同時並行・逆戻りあり
柔軟性やや硬直的柔軟で現実的

ERG理論は、実際の人間行動をよりリアルに説明できるとされています。 多様な価値観や働き方が広がる現代では、こうした柔軟なモデルのほうが、実情に合っているといえるでしょう。


ERG理論の批判や限界

とはいえ、ERG理論にもいくつかの課題があります。

  • すべての行動を説明できるわけではない  柔軟な理論であっても、人間の動機のすべてを網羅することはできません。
  • 欲求の分類がやや曖昧  人によっては「これは関係欲求?それとも成長欲求?」と迷う場面もあり、厳密な区別が難しいという指摘もあります。
  • 実証が難しい  現実の場面で欲求を測定したり、行動と結びつけることが難しいという限界があります。
  • 理論の応用にやや複雑さがある  「同時存在性」や「退行」は理論としては納得感がありますが、実務での使い方が少し難しいという声もあります。

まとめ|ERG理論は「より現実に近い」モデル

ERG理論は、マズローの理論に柔軟性と現実性を加えた、人間理解のための理論です。

  • 欲求は3つにシンプル化(存在・関係・成長)
  • 複数の欲求が同時に存在し、並行して満たされる(同時存在性)
  • 欲求の満足によって進級したり、不満足によって退行する(可逆性)

私たちは、「安心して暮らしたい」「誰かとつながりたい」「もっと成長したい」と、複数の気持ちを同時に抱えながら日々を生きています

ERG理論は、そんな人間らしいゆらぎや動機を、やさしく言葉にしてくれる理論なのです。


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