〜思考の質を変える、5つのアクション〜
はじめに:「知ってる」だけじゃ変わらない
前回は、「クリティカル・シンキングとは何か?」をご紹介しました。 今回はその続きとして、「じゃあ実際にどう使えばいいの?」をテーマに、5つのステップで実践法をご紹介します。
ポイントは、“考え方を知る”だけで終わらせず、日常の中で使うクセをつけること。 ちょっとした場面で「ほんとにそうかな?」と問い直せるようになるだけで、思考力が底上げされます。
ステップ①|問題を具体的な問いに分解していく
まず大切なのは、「何について考えようとしているのか?」をはっきりさせること。 ざっくりとした悩みや違和感を、“具体的な問い”に分解することで、思考の的が絞れてきます。
例:「売上が下がっている」 → 「どの商品が?」「いつから?」「どんな影響があった?」など、具体的に掘り下げていく
問題を細かくしていくことで、何を調べるべきか・どう判断すべきかがクリアになります。 「考えるべきこと」が見えてくると、そこから行動にもつながりやすくなります。
ステップ②|思い込みや前提を疑う
「これは当然こうだよね」と無意識に決めつけていることが、思考の視野を狭めてしまうことがあります。 だからこそ、一歩引いて前提を見直してみることが大切です。
例:「A案はコストが高い」
→ 「何と比べて?」「そのデータ、いつの情報?」
「いつの間にか当たり前になっていること」ほど、立ち止まって問い直してみる。 そんなクセが、より柔軟で深い考え方につながります。
ステップ③|感想と事実を切り分けて考える
「〜と思う」といった感想や意見と、「数値」や「実際に起きたこと」といった事実は、しっかり分けて考えることが大切です。
この区別があいまいなままだと、印象や感情に左右されて、冷静な判断が難しくなってしまいます。
例:「お客様の評判が悪い」 → 実際のレビュー件数や内容を確認して、“感想(誰かの印象)”と“事実(数や具体的な出来事)”を丁寧に分けてみる。
大切なのは、「誰が言ったか」ではなく、 「何を根拠にそう言っているのか?」に注目すること。
ちょっと立ち止まって、「これは感想?それとも事実?」と整理するだけで、情報の受け取り方がグッとクリアになります。
ステップ④|他の視点から見てみる
自分の視点だけで考えていると、どうしても偏りが生まれがちです。 そこで大事なのが、「他の立場ならどう見えるか?」と意識的に視点を切り替えること。
たとえば…
- 顧客の立場だったら、どこが気になる?
- 上司の視点なら、この提案はどう評価される?
- ライバル企業なら、どう攻めてくる?
こうした問いかけをするだけで、見えていなかったリスクや可能性に気づけることがあります。
他の視点を持つというのは、「他人になりきること」ではありません。 むしろ、自分の視点だけでは見えない部分に意識のライトを当ててみる感覚です。
顧客・チームメンバー・上司・ライバル・外部の専門家・未来の自分…… 視点の数だけ、新しい発想や判断の材料が生まれます。
思考を深めたいときは、立場を変えて自分に問いかけてみるのがおすすめです。
「もし自分が顧客だったら?」「上司だったら?」「ライバルだったら?」と視点を入れ替えてみるだけで、見えてくるものがガラッと変わります。
それだけでも、判断の質はぐっと高まっていきます。
ステップ⑤|結論を出しても、もう一回見直す
「よし、これでOK!」と結論が出たあとでも、もう一度だけ問い直してみましょう。
「ほかにもっといい方法は?」「これって本当にベスト?」
再確認の習慣が、ミスや見落としを未然に防ぎます。 特に大きな判断ほど、「一呼吸おいて考え直す」ことが、結果を分けるポイントになります。
応用できるのは仕事だけじゃない
この5つのステップは、会議や資料作成だけでなく、日常生活にも活かせます。
たとえば、 「この買い物、ほんとに必要?」 「SNSで流れてきた情報、どこまでが事実?」 「今、この判断、感情で流されてない?」
こんなふうに小さな問いを立てるだけでも、より納得感のある選択ができるようになります。
得られるメリット
- 冷静で論理的な判断ができるようになる
- 感情や主観に流されにくくなる
- 新しい視点や気づきが生まれる
- リスクや見落としを防ぎやすくなる
まとめ:小さな「問い」が、思考を変える
クリティカル・シンキングは、特別なスキルではありません。
「ほんとにそう?」と問いかける習慣さえあれば、誰でも鍛えることができます。
最初は時間がかかるかもしれませんが、慣れてくると自然に“クリティカルな目”が育っていきますよ。

ちっちゃな問いがいいんだね
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