『具体と抽象』書評|思考力を抽象化と具体化で高める

青い海と空の間に佇む白い灯台。思考と対話のヒントを照らすように 書評

こんにちは。あいうえです。

今日も、ちょっと役立つお話をお届けします。

今回は『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』(細谷功 著)という本についてのお話です。

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はじめに|「具体的に言って」と言われても…

会議や打ち合わせで、「もっと具体的に言ってくれませんか?」と言われたこと、ありませんか? たしかに、言葉は通じているはずなのに、「なんで伝わらないんだろう…」とモヤモヤした経験、私も何度かあります。

「これを言えば、きっとわかってもらえる」と思ったのに、うまく伝わらなかった。 そんな経験から、「どうすれば理解がすれ違わないのか?」を考えるようになりました。

そんなときに出会ったのが、今回ご紹介する一冊—— 細谷功さんの**『具体と抽象』**です。

言葉がすれ違う理由、相手に伝わる話し方、そのヒントがこの本には詰まっていました。 さっそく一緒に、読み進めていきましょう。

抽象って、そんなに大切なもの?

本書では、「抽象」というものを、単なる概念ではなく、人間を人間たらしめるものとしてとらえています。 つまり、「抽象化」が、私たちを他の動物と決定的に違う存在にしているというのです。

とはいえ、「抽象」って言葉を聞くだけで、なんだかわかりにくそうなイメージがあります。 世の中全体が「わかりやすさ」や「具体性」を求めていく流れになりつつあると筆者は言います。

具体的な例を示されると、理解した気になります。

でも、ここで本書が伝えているのは、「抽象は、わかりにくいもの、悪いものじゃない」ということ。

具体は、ひとつひとつの個別の事象に対応したもの。 一方、抽象とは、それらを共通の特徴でまとめ、一般化したもの。 つまり、複数の具体(N)を、ひとつの抽象でまとめあげる(N:1の対応関係)ということです。

この「まとめる」ということが、実は非常に高度な思考なのです。

この抽象化の力があるからこそ、私たちは「別の場面にも応用できる」「根本の構造が見える」といった思考が可能になるのです。

お互いの理解を助けるヒントとは?

この本で特に心象的だったのが、「本質」という章です。「議論がかみ合わない理由」に対する回答です。 実は多くの議論には、決定的に欠けている視点があるといいます。

それが「具体と抽象の視点」です。

たとえば、目の前の問題に対して、ある人は「もっと○○を改善しよう」と具体的に話します。 一方で、別の人は「そもそも、使いやすさって何だろう?」と本質を抽象的に捉えようとします。

どちらもまちがってはいません。でも、抽象度の“レベル”がそろっていないと、議論はすれ違ってしまうのです。

このすれ違いに、本人たちは案外気づいていなかったりします。 「なんだか話が通じないな」と感じながらも、それぞれが自分の論理で話を進めてしまう。

たとえば、製品開発の現場では——

  • 「このボタンの位置を変えてほしい」と訴える具体的な改善要望を出す人もいれば、
  • 「もっと使いやすくしたい」という漠然とした理想を語る人もいます。

後者は抽象度の高い意見ですが、伝え方次第では「何を言ってるのかわからない」と片付けられてしまうこともあります。

著者は、とても興味深いたとえを出しています。 具体と抽象の世界は、まるでマジックミラーで隔てられているようなものだと。

つまり、抽象の世界が見えている人には、具体もよく見える。 けれど、具体しか見えない人には、抽象の世界が“見えない”。 そしてそれは、一方通行だというのです。

さらにやっかいなのは、いったん抽象の世界に踏み込むと、かんたんには具体だけの世界には戻れないということ。 思考のクセそのものが変わってしまうからです。

だからこそ、「なんでこの人には、これが伝わらないんだろう?」と感じる瞬間は、もしかすると、抽象度のレベルがそもそも合っていないだけなのかもしれません。

そうなると、残念ながら、その議論は—— 永遠に、かみ合わないまま終わってしまうこともあるかもしれません

まとめ|「抽象化」の力を、あなたの武器に

本書『具体と抽象』を通じて、あらためて気づかされたのは、**私たち人間が持つ「抽象化する力」**のすごさです。

私たちは、目の前の事象から共通点を見つけて整理し、全体像をつかもうとする力を持っています。 ただその力があるからこそ、「考えすぎて動けなくなる」といった弊害もあることに、本書は指摘しています。

そして今回の大きなテーマでもある「お互いの理解を助けるヒント」—— それはやはり、抽象化のレベルが合うかどうかにかかっています。

抽象度のレベルが合う、もしくは近ければ、話は噛み合い、議論も深まります。 でも、レベルが違ったままでは、どうしても話が噛み合いにくくなるのです。

そして重要なのは、抽象の世界が見えている人からは具体的な事象も見えるけれど、逆は見えにくい。 つまり—— 議論がすれ違ったまま終わる可能性があるのです。

でも、だからといってあきらめる必要はありません。

そういった「理解の違い」があることを知っていれば、むやみに相手を責めたり、「なぜ通じないのか」とイライラすることは減らせるかもしれません。

本書は、そんなふうに「すれ違いを避けるための視点」を与えてくれる一冊でした。


この本をおすすめしたい人

この本は、高校生や大学生など、これから思考力を伸ばしていきたい人にもぴったりだと思います。 特に、夏休みなど時間にゆとりがある時期に読むにはちょうどいいボリューム。

ページ数も140ページに満たない程度ですが、内容はとても濃く、一つひとつの概念をしっかりと咀嚼しながら読み進める必要があります。 じっくり考えながら読むことで、思考の幅が広がるはずです。

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